第一章・初春

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ガチャリ 愛佳は制服に着替えて社長室のドアを開けた。 中にはレイジが居た。 「失礼します」 「ああ、来たかい」 レイジは愛佳に気づくとまたあの微笑みを浮かべた。 「あの…社長代理、社長は…」 ここは社長室… だが感じんの社長が居ない。 「ん…ああ、愛佳はご存知ありませんでしたね、このルナ・ヴェネチアンの社長はこの方なんです」 そう言ってレイジが差し出したのは… 花だった。 「え… このお花…ですか?」 「ええ」 何の特徴も無い花… 強いて言えば淡い青の花びらが可愛らしい花だった。 「このルナ・イタリアにあるゴンドラ会社では社長は会社の象徴であって、業務をこなすのは私達社長代理なのです」 「象徴…ですか」 「ええ、この会社の象徴は一世紀ほど昔、地球の日本に咲いていた[ツユクサ]言う花です。創始者の方がその色合いの美しさに感動したのが由来とのことですよ」 ここで愛佳はふと話の矛盾に気づいた。 「あの…ツユクサって確か2080年代に絶滅したと習ったんですが…」 レイジは目を丸くして言った。 「驚きましたね… いやぁ、愛佳さんは博識だ。」 「確かに本物のツユクサは絶滅してしまいました… なのでこのツユクサはガラス細工です」 レイジは苦笑いしながら告げた。 「ガラス細工…ですか… でも綺麗な青ですね 私、この花…ツユクサ、今日好きになりました」 そう言って愛佳は柔らかく微笑んだ。 「ふむ… いやぁ、愛佳さんはいいゴンドリアーネになりそうだ」 レイジは微笑んだ愛佳を見てそう言った。 「え… あ、ありがとうございます」 「いえいえ、お世辞とかではなく… そうやって素直に綺麗な物を綺麗だと思えるのは… 凄く大切な才能なんですよ」 そう言ってレイジは優しく微笑んだ。 「さて、愛佳さん 下に降りて皆さんに挨拶しましょう。 それから初仕事ですよ」 愛佳は更なる期待に胸を膨らませた。 「はい!! 頑張ります!!」
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