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でも納得。なんだろうね、私たちにはない純粋さがあるんだよ。
「んで、あたしが悪魔」
それはそれでまた納得。
小悪魔的な大魔王とか。彼女のイメージってそんなんだよね。
「じゃあ、私は?」
マコが天使で彼女が悪魔。それじゃあ私はそれによってふらふらする人間?
「堕天使。一見無害そうな天使面して、実際は悪魔より鬼畜」
「やっだなー、そんな事ないよ?」
「姉さん、目が笑ってないぜ」
「あははー」
マコよ、私はいつ貴女の姉になったのだ。
「あんた達まだいたの。早くしないと授業遅れるよ」
振り向けば開けっ放しのドアから養護教諭の水谷先生。もうそんな時間か。
「めーんーどーいー」
駄々をこねる彼女は、そう言いながらちゃんと支度をしている。
偉いよ君は。私なんかまったく支度してないからね!
「はいはい、さっさと行く!」
先生に追い立てられ、私たち三人は保健室を出た。
それからいつものように授業を受けて、いつものように放課後、私たちは帰るはずだった。
「じゃあ、私やることあるから先に帰ってて」
「はいよ」
「じゃあ、またね~」
私は学校に残り、二人を送った。
テスト期間中なだけあって、部活が禁止されている今はどこも静かだ。
私は三階まで上って、一番奥の部屋、美術室のドアを開けた。そしてその部屋のさらに奥。非常階段のドアを開ける。
十月の冷たい空気が、私を撫でる。
持っていたカバンを下ろし、つけていた眼鏡をはずす。靴を脱ぎ、非常階段の手すりに座る。
ああ、今ものすごくドキドキしている。味わったことのない快感が、私の中を駆け巡る。しばらく私は足を空中に投げ出したまま、その快感を味わう。
気づくと、日が沈みかけている。
黄昏。
逢う魔が時。
ちょうどいい頃合だ。
私はきっと、笑っているのだろう。
母親に駆け寄る幼子のように、私は空へ身を預けた。
風が私を包み込み、意識は遠のいた。
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