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闇。
真っ暗。
何も無い。
不意に、前に丸く白い光。
決して届かない距離に、光。
私に、私が届くことの無い、光。
意識が浮かび上がり、目が覚める。
ああ、やっぱり病院だ。
その後、色々な検査を受け、結果が出た。
右足甲を粉砕骨折、左足首粉砕骨折、第二腰椎圧迫骨折。
寝たきりが三ヶ月。そしてリハビリに三ヶ月。私は半年間、病院にいた。その間、彼女は一回も見舞いに来なかった。
大体がよくなって、退院許可が下りた私は、久々に学校に行った。
学校の始業式に合わせて退院したから、彼女に会うのは始業式の後だろう。
始業式が終わり、保健室へ向かう。保健室には、やっぱり彼女がいた。
「始業式はサボったようですね」
「来たのが十時過ぎだったからね」
初日から重役出勤ですか。
「ね、足、大丈夫?」
そう聞いてくるのはマコ。私は平気と笑顔で答える。
マコは相変わらず心配そうな顔をしている。
彼女は、いつもと変わらなかった。
それでいい。
「ねぇ」
彼女の呼び声に、振り返る。
私を見つめる彼女。
もし、続く言葉によっては、私と彼女は縁を切ることになるだろう。
踏み込んではいけない領域。それを侵すものは、誰であろうと許さない。
たとえ、彼女でも。
「理由は?」
「なんとなく」
「そう」
彼女の質問に、私はあっけなく答えた。彼女もそれ以上聞くことも無く、携帯に目を落とす。
マコは状況がよくわかっていないらしく、困惑の表情だ。
それから私たちは、また昔のように日常を始める。
馬鹿なことをして、馬鹿みたいに笑う日常を。
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