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それから彼女とは何度かメールをし、やっと夏休みになった。
私と彼女が行くのは、近くのテーマパーク。軽く遊んで、近くの温泉に入った。むしろ、温泉が本命だったりして。
服を脱ぎ、タオルを体に巻いてお湯につかる。
「気持ちいぃ~」
ものすごく幸せそうに、彼女はお湯につかっている。
私も隣に座り、お互いに他愛ないことをしゃべる。
適度にあったまった体を冷やそうと、私は湯船の縁に腰掛けた。
そのとき、彼女の視線が私の左足首を見た。そこには、二十センチ弱の手術跡が。
彼女はすぐに視線を逸らし、何事も無かったように会話を続けた。私も、同じように会話を続ける。
温泉から出て、私は彼女の父親が運転する車に乗って彼女の家を目指す。今日は彼女の家に泊まる予定。
「いらっしゃい」
彼女の家に着くと、母親らしき女性が待っていた。
とても穏やかそうなその人は、とても彼女の親には見えない。しかし女は女優だという。いつ、どんな風に豹変してもおかしくはないのだろう。
「お邪魔します」
「ただいま。部屋にいるから」
彼女は母親にそれだけ言うと、さっさと私を部屋に案内した。
彼女の部屋はさすがというべきか、ある程度は片付いているが、そこはかとなく雑然としていた。まぁ、私の部屋よりマシだろう。
でも、さすがというべきはやはり女の子感たっぷりなところだろう。私の部屋にはないものだわ。
「適当に座って」
「はいよ」
それから適当に話をして、食事をして、私たちは布団を並べて寝た。
私は割と寝つきが悪かったりする。しかし、いったん寝るとなかなか起きない。特に他人の家に行くと、気絶したように、あるいは死んだように眠っていると言われる。
なんでも、どんだけ弄繰り回してもなかなか起きないんだとか。っていうか、寝てるやつを弄繰り回すなよ。まぁ、私は弄繰り回すけど。
そんな私が、寝ているときに不意に目が覚めた。
闇の中、隣で動く気配がした。
そりゃあ、彼女だって寝返りぐらいは打つだろうけど、それとは違った気配。
おそらく、彼女は今、起きているのだろう。トイレか何かだと思い、私は特に気に留めなかった。だが、違っていた。
何かが覆いかぶさってくる気配。そして、唇に触れた、柔らかいもの。
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