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  私の視界を横切るのは、小柄な彼女の明るく染められた人工的な赤だった。 彼女はこの上下関係の厳しい学校と言う世界で、一番下にもかかわらず髪を染め、スカートの裾を短くしていた。 上級生からの教育と言う名の折檻もあったようだ。そしてそれは、クラス内にも伝染した。 体育の授業。 元から運動が得意ではない私は、隅のほうでぼんやりと見ていた。 「ねぇ、その頭何とかならないわけ?」 棘のある女子の声が聞こえた。 自分のことかと思ったが、違ったようだ。私は父親に異国の血が混じっていたらしく、天然で赤茶色という髪の色をしている。日に当たるとそれが際立つため、私は太陽が嫌いだ。 「私の頭の前に、あんたたちの頭ん中どうにかしたら?」 ああ、彼女の声だ。 そうか、言われていたのは彼女だったのか。 視線を向ければ、三人ほどの女子に囲まれた彼女がいた。綺麗に二つに結われた髪は、左右でひらひらと揺れている。 かわいい、かも。 「……っ、黙れ!」 小馬鹿にしたような彼女の答えが気に入らなかったのか、リーダーらしき少女が怒鳴る。 「そういう態度が、気に入らないのよ!!」 一人の少女が隠し持っていたはさみを取り出し、彼女の揺れる髪に向かって突き出した。 「切ったら、少しはましになるんじゃない?」 ニヤニヤと笑うその表情は、とても汚いと思う。それに引き換え彼女は、無表情に凛と立っている。 いきなり、彼女が行動に出た。はさみを奪い取り、自分の髪を切り落とした。 ジョキン、ジョキン。 たった二回の音で、彼女の髪はとても短くなってしまった。ああ、もったいない。 「これで満足?」 彼女は悠然と笑って、はさみの柄を少女に向ける。 縛っていた場所から切ったその髪は、左右が非対称でなんともいえない髪型だった。それでも様になっているのは、きっと彼女だからだろう。 羞恥と屈辱に顔を赤くした三人の少女達は、逃げるように彼女から離れていった。 「ちょっとー、はさみ持って行きなさいよー」 いまだ彼女の手にあるはさみ。確かにそんな物を置いていかれても困る。でも、まぁ。 「いいんじゃない?」 「は?」 「そのはさみ持って、保健室おいで。髪形、整えなきゃならないでしょ?」 授業が終わった。私は彼女にそれだけ言って、体育館を後にした。 来るかどうかは、彼女次第。 .
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