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いつものように保健室でアップルティーをストレートで飲みながら、養護教諭である水谷先生の愚痴を聞いていると、ものすごく不機嫌そうに保健室のドアが開いた。 不機嫌に音を立てるドアを開けたのは、それ以上に不機嫌な彼女だった。 彼女はあの頭髪事件(勝手に命名)から、私と同じく保健室登校となった。肩口くらいに揃えたセミロングの髪形は、ちょっとだけ彼女を幼く見せる。 「録画……」 「録画?」 「デッキぶっ壊れやがって録画できてなかった!!」 某月某日晴れ。 今日も彼女は元気です。 「何が録画できてなかったの?」 あ、先生。それは聞かないほうが良いとおもうよ。 「深夜アニメ、女装少年に恋してるが取れてなかったのー!!」 説明しよう! 女装少年に恋してるとは、とあるパソコン用ゲームソフトをアニメ化したものである。 主人公の少年は代々理事を勤める女子高を継ぐために女子高に通わなくてはならなくなる。なぜって、後学のために。そこで繰り広げられる少女たちとのちょっぴりエッチなラブストーリー。ちなみにゲームは指定物です。 「えーと、つまり?」 「男性向け深夜アニメを撮り逃したと言うことです」 「よく知っているわね」 「見てるから」 「……そう」 ごめんね、先生。でも、面白いんだもの。私は面白いものに貪欲なのさ。 「折角のサービスカットが……」 ああ、そういえば今回のにはやたら入浴シーンやらなんやらが多かったような。 「私が撮ったやつでよかったら貸そうか?」 「マ・ジ・で!? ありがとー、愛してる!」 「どういたしましてー。その代わり英語写させてー」 「いいよ、どんどん写して!」 「自分でやんなきゃ身にならないわよ」 先生の声に混じって、スピーカーの雑音が聞こえた。 『水谷先生、お客様がお見えです。至急職員室までお越しください』 養護教諭って、何気に来客とか多いよね。 「ちょっと行ってくるけど、ちゃんと授業は出なさいよ?」 「はいっ!」 私と彼女は元気よく返事をする。 「それから、授業中はちゃんと授業を受けること!」 「……はいはい」 この言いつけには適当な返事を。 「はいは一回!」 「はーい」 「短く!」 「ヘイっ!!」 なんとも微妙な掛け合いの後、先生は脱力して保健室を出て行った。 彼女と先生はいい漫才コンビになるだろう。 さて、もうすぐ授業だから私たちも行きますか。 .
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