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「今日は何して時間潰す?」
問いかけは、とてもいい笑顔と共に返ってきた。
「先生苛め」
「オーケー」
彼女の笑顔の即答に、私も笑顔で返事を返す。
授業中の教師苛めは最高に面白い。
人生面白おかしく楽しく。
他人も世界も巻き込んで。
それが私たちの信条だから。
「せんせー。遅れましたー」
「たー」
今日はちょっと遅刻。
元気よく最前列のドアから入って選手宣誓のように遅刻を報告する私。それに続く彼女。
もはや諦めムードな我らが社会科担任。
「お前ら、遅刻って言うのは終わる前にくることを遅刻って言うんだ。終わってから来るのは欠席だ」
「学校に来た分、ましだと思いますけど?」
当然という風に私が答えると、深いため息をつく三十代後半痩せ型の男性。後十年後にはたいそう可哀相な状態になっていそうだ。何がって、その栄養の行ってなさそうな頭部とか頭髪とか。
「で、遅刻の原因はなんだ?」
「寝坊です!」
「威張るな!!」
プチ漫才を繰り広げていると、ややダウン気味の彼女が口を挟む。
「寝坊したのはあたしだけどね。腰が痛くて起き上がれなかった……」
「ああ、ごめんなさい! 私が昨晩あんなに……先生、私が原因だから、彼女を攻めないで!!」
いかにもと言う感じに彼女の肩に手をかける。それに合わせるように彼女も私にしな垂れかかる。
「お前ら、程ほどにしろよ」
先生の笑いをこらえたような表情と台詞に、クラス一同爆笑。
まぁ、イロモノは受けるからね。
実際は長時間座ったままパソコンをいじってたから、らしいんだけどね。
「とりあえず、次の授業にはちゃんと出ろよ?」
「りょーかい」
適当な返事は、私たちの専売特許だ。
「暑いからって、どっかに逃げるなよ?」
「……」
「返事しろ!」
「いやだ!!」
イヤだって貴女……。
彼女の思いっきりの反発に、先生はもうため息しか出ないようだった。
ああ、でも、彼女は窓際だから辛いかもね。私は窓際でも一応壁のある位置だし、それほど日光は当たらない。
ホント、夏って辛いよね。
チャイムが鳴って授業が始まって、頭を通り抜けていく風と教師の話し声。黒板には赤、白、黄色の模様。
ああ、眠いぜ。
これから試験もあるって言うのに、本当にのんきだ。勉強なんて二の次三の次。こんな暑い日は、クーラーの効いた部屋でうだうだしているのが一番だ。
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