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そうだ、この前彼女に教えてもらったアーティストの曲でも聴こう。私は音楽関係に疎いから、その辺は彼女に全部教えてもらっている。私が知っている曲は、全部彼女から教えてもらったものだ。
ちなみに、私が曲を教えてもらう代わりに、私は彼女に面白い本を教える。本なら家にもたくさんあるし、読書好きな親がよく買ってくる。私も暇つぶしに読むから、結構たくさんの本を知っている。
だからこれは交換条件。
うつらうつらと夢現に考えていると、時間はやけに早く進む。
「今日はここまで」
「きりーつ、礼、ちゃくせーき」
ざわつき始めた教室。
ああ、もう昼休みか。でもこんな暑い日は食事もマトモに喉を通らない。
その日は結局、ほとんど食事に手を付けることなく昼食を終えてしまった。彼女は相変わらず食欲旺盛なようだったけど。
それから放課後まで黒板の模様と格闘して、やっと帰宅時間。
「終わったー!!」
「お疲れ~」
彼女の元気な声に、私はけだるげに返事をする。
「どしたよ、元気なさげじゃん」
彼女は席を立ち、私の目の前に来る。紺色の制服が、私の目の前で揺れる。
「なんか、胸が苦しいの」
そう言うと、彼女は大げさなまでに驚いた。
私は顔を上げ、彼女の黒い瞳を見つめる。そしてゆっくりと口を開く。
「なんだろう、この胸の苦しさは」
「苦しくて苦しくて、でも愛おしくて」
「ああ、甘酸っぱいこの感情は……」
「それは恋……」
「ああ、恋……」
ゆっくりと手を取り合って、まだ眩しい太陽に……って、ホントに眩しっ!!
「ぐぉぉぉー!!目が、目がぁぁぁっ!!」
「喰らえ、逆光眼鏡!!」
「ぎゃー!!」
あ、言ってなかったっけ? 実は私、素敵眼鏡っ子なのである!
なんて言っても、普通のメタリックフレームだけど。
「あー、なんか体力使い果たした……」
彼女はいきなり机の上に突っ伏した。
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