白い魔物

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     2010年――アフリカの密林キャンプ地。 「おい、てめぇら! 目的は金持ちに売り飛ばすライオンだが、他にも何か見つけたら容赦なく撃てよ! 何でかは知らねぇが、ここは動物の種類が豊富だ! お宝の山なんだからな!」  丸みを帯びた、狡猾そうな顔つきの男が、引き連れた十九人の隊員を煽り立てる。すると、辺りはそれに応じた隊員の歓声に沸いた。  この男の名は、ゴードン。  腹が減れば、どんな動物でもハム・エッグのように、さっさと焼いて食べてしまう事から、ハム・エッグ・ゴードンとあだ名されている、この部隊の隊長である。  部隊の目的は言わずもがな、密猟。  キャンプには、武器、弾薬、食料品、医療品が詰め込まれた木箱が積み上げられており、鉄製のオリとガソリンを積んだトラックが数台停車してある。  ハンターというよりは、もはや傭兵と言っても良いほどの、過剰な装備である。とある噂が、そうさせていた。  さて、歓声に気を良くしたのか、ゴードンが木箱の上に立ち、話を続ける。 「ジャングラ族から聞いた『エデン』! それから『白い魔物』! 本当に見つけたら儲けもんだ! ロマンを追いてぇ奴は気合い入れて探せ! まぁ、そんなもん無ぇと思うけどなぁ!」  ゴードンの一声で、キャンプがハンターたちの盛大な笑い声に包まれる。だがその直後、突然、大地を揺るがすような獣の雄叫びが密林から聞こえてきた。  隊員全員が黙り込む。 「な、何だ……?」 「こんな雄叫び、聞いた事ねぇよ……」  しばらくして、隊員たちが一斉に口を開き呟き出す。  キャンプがざわざわと騒々しさを増し、隊員たちが未知の存在、白い魔物に対する恐怖を募らせ始める。だが、 「馬鹿野郎共がぁっ! 何をビビってやがるんだっ! さっさと準備を始めねぇかっ!」。  と、ゴードンが一喝。途端に、隊員たちは正気を取り戻し、密林へと足を踏み入れる準備を開始する。  
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