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社長が顔を離せば、名残惜しげに繋がる銀糸。
それを指で切り、目を開けた社長は明らかに興奮の色を宿した艶っぽい瞳をしていた。
なのに…
「…何故、泣く?」
私の瞳からはとめどなくあふれる涙。
奪われたキス…
柔らかい唇、甘く鼻孔を擽る香水、暖かく包み込む腕。
そのすべてに安心を、快楽を覚えていた自分が嫌だった。
何故好きでも無いのにキスなんてするんだろう…何故私は受け入れてしまったんだろう。
「しゃ…グズ…社長の……バカ!!」
私はそう言い捨てて全力で駆け出した。
行く当てなんて無い。それでも逃げずにはいられないのは、自分のせい。
社長のキスを受け入れてしまった気がしたから…
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