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私は右も左もわからない会社の中をただ出口を探して走り回った。
最上階の社長室からは大分降りたはずなのにまだまだ階段は続き、少しうんざりしたけど、早く出たい気持ちが後を押した。
そしてやっと出口が見えた時に社長はすでにそこにいた。
「何処に行く?」
「社長には……関係ない……と思います!」
「何故だ?俺のせいで泣いているんだろう?」
「ちが……関係ありません。どいて下さい。」
「嫌だな。
俺のせいで無いならば尚更仕事に戻れ。」
「お断りいたします。
私はこちらでは勤務致しかねます。
どうぞ違う方をお探しください。
お手数おかけ致しました。では、失礼いたします!」
グイッと社長を押しのけて通り過ぎる。
丁寧な口調を気にかけながら精一杯拒否を表した私を社長はただ呆然と見つめる。
そして小さく「何故だ?」と囁いた。
勿論私が答える訳はないけどね?
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