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一瞬で思い出した。そして思う。
なんで、忘れてたんだろう。大切なことだって知っていたのに。忘れちゃいけなかったのに。
私は忘れてしまっていた。なのにカミサマは優しい。
「やっぱり千種だった。随分大きくなったね」
きっとカミサマは笑ってた。その優しさが痛い。
裸足のカミサマはひたひたとこっちに歩いて来た。寒くないのかな、と全然関係のないことを思う。雨で濡れた髪と服が体に張り付いて気持ち悪い。
「また、困ってるね。千種」
な、んで分かるんだろう。
動揺があからさまに伝わったんだろう。
カミサマが儚く笑う。
「話してみて」
その優しさに私は縋ってしまった。
気付けば洗いざらい話していた。今まで誰にも言えなかったことも。全部全部全部。
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