雨は優しくて冷たい

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 柘榴のように赤い、不吉な色をした液体。  どうして私はこんなまだるっこしい表現をするのか。  理由はもちろん、それが何なのかを私がはっきりと認識したくないから。知ってはいるけど、分かりたくない。  でも、厭に鮮やかなその色は今でも目の奥にこびりついている。忘れてしまえば楽になれるのに。  その色ばかり思い出す。ただそれだけに目を奪われた。  もう一つ覚えているものがある。  見た順番はどっちが先だったかはよく分からない。あまり関係ないかもしれないけど。  もう一つ私が見たのは、お母さんだった青白い手。  見た瞬間はまだ、なんていうのかな。私にとっては人の手だった。  でも本当は、とっくに「物」になっていた。人の手は人の手なんだけど、もうそれは「物」だった。  これ以上ははっきりと言えない。言いたくない。  ただ、妙に白かったあの手が今も怖くてたまらない。
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