雨は優しくて冷たい

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「それから、叔母さんの家に引き取られて、学校に普通に通って」  うんとか、そうとか、時々相槌を打つだけでカミサマはじっと私の話を聞いていた。 「だけど、ずっと、心に引っかかったままだった。私が、わがままを言わなかったら、きっと。二人は死ななかったのにって」  だから、家を飛び出してしまった。絆創膏を何枚も重ねてごまかしたところで、心の傷は治ってなんかいない。ずっとずっと、それに気づかないふりをし続けていた。 「でも、もう限界だよ。もう、無理だよ、ごまかしきれない……」  目を逸らし続けたけれど、放置し続けた傷はじゅくじゅくと膿んで心を蝕んでいった。 「もう、生きていたくなんかないよ」  わからないふりをして、隠し続けた本心だった。
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