雨は優しくて冷たい

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 こうしてカミサマは千種となり、私は名無しの人間になった。そして、私は自分の抱えていたものを全てカミサマに押し付けた。  でも、やっぱり私が千種であることには代わりなくて。叔母さんも叔父さんも私を千種と呼ぶ訳で。私は私であることから逃げるなんてできなくて。  初めから、カミサマに全てを押し付け続けるなんてできる訳がなかった。  だんだん学校にも行けなくなった。人の目が怖かった。部屋に閉じこもった。叔母さんにも叔父さんにも心配かけてしまったけど、どうしても駄目だった。  そのうち耐え切れなくなって、また黙って家を飛び出した。向かう先は、今や千種になったカミサマのところしかなかった。
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