69人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
「千種」
カミサマが私を呼ぶ声で私は過去から現在へ戻ってくる。淡い淡いカミサマ。きっとあなたはもうすぐ消える。私には止められない。だってカミサマはもう決めてしまったのでしょう?
おとなしく寝ていることなんてもうできなかった。無理矢理体を起こそうする。腕に刺さっている管が邪魔で、外れてしまいそうだったけれどそんなの関係ない。やっとのことで起きれば眩暈がした。
「自分を許してあげてって言っても、きっと君はできないんだろうね。泣けないんだろうね」
私が口を開く前にカミサマは同じようなことを繰り返す。だから私は言う。
「わかっているならもう何も言わないで」
カミサマと目を合わせる。そこにいるはずなのにひどく薄い存在。手を伸ばして触れれば消えてしまいそう。そんなカミサマは雪のように淡く笑う。
「でももう我慢しないでほしいんだ。たくさん泣いて、そうして笑っていて」
最初のコメントを投稿しよう!