頬を伝う雨

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「無理、だよ。笑えないよ……」  そんなこと、できるわけないよ。ねえカミサマ、知っているくせに。  なのに貴方は私をなだめるように言う。 「大丈夫。もう、大丈夫」  そんなの、理由になってない。満足そうな顔をしないで。貴方ばかり救われて。救ってほしい、なんて言わない。救われる価値も資格もあるなんて思ってもないから。でも、それでも貴方は私を救おうとしている。そんなこと、しなくていいから、だから。 「僕のためには泣かないで。僕のためというなら、どうか笑って。千種には笑っていてほしいから」  お願い、とカミサマは言う。卑怯だ。貴方はもう消えてしまうから。いなくなってしまう貴方の願いを叶えないなんて、そんな。それが心からの願いだと、わかってしまう。 「……だよ」  言葉がこぼれた。 「……やだ、よ。いなくならないで……!」
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