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カミサマ。雨のカミサマ。忘れられて、きっともう、私しか知らない。
誰もいないここは淋しい。
花の種をここに蒔こう。
ふとそう思った。貴方は私を千の種、千の希望と呼んだ。だから花の種をここに蒔こう。貴方が淋しくないように。花が咲けば、きっと淋しくない。
朽ちかけた祠の前に膝を着く。汚れると思ったけれど、今はどうでもいいとも思った。
祠を見つめ、今はもういないカミサマに語りかける。
「カミサマ、ねえカミサマ。あれから私、笑えるようになりました。少しずつ、少しずつ前へ進んで行っています。
ちゃんと貴方の言うとおり、笑って生きていくから、
だから、」
そこからは言葉にならなかった。
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