11月のまーちへあ

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起きぬけに君と溶けたもので、シャワーを浴びもせずに出てきたもので、終わりかけの秋と、始まりかけた冬も、似たように溶けた風の中で、いつにも増して君の香りがまとわりつく。 よく晴れた空を見上げもせずに、小春日和だ、などと隣で笑うから小春と呼ぶには少し遅い気もする僕の常識などどうでもいい、11月の終わりから2番目の日。 どこかに行こうかと尋ねれば、お気に入りのあのパン屋に寄って、バターフランスを買って、帰ったらそれを頬張りながら、ダラダラ過ごすのが最高じゃない、と僕を見もせずに隣で笑うから、それも悪くないと思える、朝と昼の間くらい。 じゃあダラダラと何度もセックスをしよう、と提案すると、本当に呆れた顔で、あの日からあきれるほど繰り返してきたのに、と僕の知らない遠い日々に眼を向けながら、君はまた、いつもと違う帽子をそっと撫でる。 なんでもない日なんて、きっとそういうもんさ、なんて笑った僕に、どうせまた私がイク寸前でいぢわるするくせにと、口をとがらせるのだけど、なんでもない日だから、それだってきっと仕方ない。 終わりかけの秋と、始まりかけた冬も、似たように溶けた風の中で、いつにも増して君の香りが纏わり付くから、帰り着いたら、バターフランスを僕に融かす前に、君とまた溶けあいたい。
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