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いっその事、楽に死んでしまいたかった。
「もう死にたいって?」
日の差し込む病室の中。私は残り少ない人生をベッドの上で過ごすしかない。
近づく死への恐怖。何をすることもなく、ただそれを感じながら生き続けるくらいなら……
しかし、彼女はそれを絶対に許してはくれない。
「嫌。まだ死なせるものですか。貴方の移り変わる表情を見るのが、私の生きる理由ですもの」
彼女はゆっくりと私の手を握り、一つ一つの言葉を絞り出すように紡いだ。
「貴方がどうだろうと、私はあなたの声、規則無く変わる表情、その全てを見て、聞くまで、私は貴方を死なせない」
声は弱くも強い意志を持ったその言葉は、私にはとても無視出来るものではなく、そしてそれはとても無茶で自分勝手な願いで、でも……
「仕方ないな…」
私に、生きる意味を与えてくれた。
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