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「月ってさ…………手を伸ばせばのばすほど遠く感じるよね」 高く手を突き上げた彼女を見て、俺は空を見上げた。 満天の星が、ビーズくらいの大きさで輝くのを横目に月はこれ見よがしに輝いて見せた。 「けど、あそこは人が行ったことあるんだぞ?」 それを聴いて口元を緩めた彼女は、口を開いた。 「そうだねぇ、人が行けるくらい近いのに。……なのに私は行くこともないんだろうなぁ。」 その言葉が少し引っかかって思わず抱きしめそうになった。 「どんな景色なんだろぅ、地球って綺麗なんだろうなぁ。」 パソコンで見た動画を思い出して口を開きかけたがやめた。 彼女が言いたいのはきっと『生』で見ることなんだ。 それよりも、月の光が降り注いで夜なのに明るい今、より一層彼女が輝いて見える。 絵画でしか見たことがない美しさに胸が痛くなる。
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