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「まぁね、誰かさんが退席したから、味も素っ気も無くなっちゃったよ。」
声の主は俺に近づいて頭を軽く小突いた。
「酒は静かに飲んだ方がうまいんだぞ?」
その手を優しく払いながら言う。
「私はどっちにしてもお酒はおいしくないよ。」
言いながら手のひらを上に向けたメグミは何かの匂いを嗅ぐように鼻をひくつかせた。
ひくつかせたのはメグミなのに、なぜか俺が甘い匂いを感じ取った。
「そぉか?……『軒醒め』しか飲んでないからじゃないか?」
「ノキザメ?なにそれ。そんな名前のお酒飲んでないよ?」
クリン。と向き直ったメグミは子供に見間違えそうな雰囲気をかもしだした。
「軒醒めは……なんつーかな。…………つか、お前昔俺の家で『あぶさん』読まなかったか?それに描いてあったけど……。」
「あぶさん?」
「……いや……いい。」
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