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「また、ケンカしたんだって?」
真っ青な空を眺めていると声が聞こえた。
授業をサボるためのこの秘密の場所は、幼なじみにはお見通しだったらしい。
「別にケンカじゃない。相手が先に仕掛けてきたから…、ただの正当防衛。」
「それをケンカって言うんだろ。」
まったく、お前は。
そうつぶやき、隆一はなんの迷いもなく俺の隣に座る。
「…いやいや、なに普通に座ってんの?」
「えっ、座っちゃ駄目なの?」
「そういうことじゃなくて…。もう授業始まるだろ。」
隆一は不良の俺とは違い、普通の、ごく一般的な学生だ。
そんなことをすれば教師達への印象が悪くなってしまう。
しかも今は三年の二学期。
俺のそばにいるからということで内申にまで響いてしまったらさすがに申し訳ない。
「悠斗だってサボってるじゃん。」
「俺は今更。
隆一は周りから何か言われるかもしれないだろ、そんなの俺が嫌だからな」
素直にそう言い、立つように促すが隆一はまったく動こうとしない。
「…俺は、べつ…き………ぃ。」
「あ?」
隆一が何か呟いたが小さくてよく聞こえなかった。
近くで聞こうと顔を寄せた瞬間、隆一の顔が勢いよくこっちを向く。
(…ちかい。)
確かに自分からも寄ったが、こんなに近くなるとは思ってもいなかった。
心臓が、何故か速くなる。
「悠斗は…俺と一緒にいるの嫌か?」
「は?」
「俺がきらいか?」
「…何故そうなる」
隆一が何を言いたいかよく分からないが、俺はとりあえず顔を離すことにした。
だけど隆一は俺の頬に手を合わせそれを許さない。
「りゅういち…?」
「俺は、悠斗と一緒にいてすごく楽しいよ。周りからどう言われても別に気にしない。悠斗とずっと一緒にいたい」
そう言って隆一はさらに顔を近づけ、
俺にキスを した。
「!!?…なに、してっ!」
「好きだよ、悠斗」
(は、)
そう言った隆一は綺麗に笑っていた。
(……俺の、ファーストキスだったのに…。)
それも相手が隆一なら嫌じゃないと思うなんて、俺もそうとう重症なのかもしれない。
2010.5.22
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