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なんかさっぱりしない気持ちのまま、梨菜ちゃんの家から背を向け、俺たちも歩き出した。
「……そういや夏氷、お前梨菜ちゃんの家知ってたのか?」
「前に一度遊びに行ったことがあるんだ。ご両親は2人ともいなかったけど」
ぁ~……やっぱり仕事でいないのか…家にも電気ついてなかったし、もしかしてまだ帰ってきてないのかも……
「陽兄ちゃ~~~ん!!」
「ん?」
遠くから、梨菜ちゃんが俺の名前を呼びながら駆け寄ってきた。
「どうしたんだ?」
「陽兄ちゃんに家の鍵預けっぱなしだった。エヘヘ」
ああ…そういや預かってたな。
俺はカバンから鍵を取りだし、梨菜ちゃんに渡す。
「じゃあ改めて、バイバイ!」
そして、颯爽と走って行った。
「………」
その後ろ姿を見つめると、やっぱり変な感じがするんだよな…
モヤモ~ヤっとした嫌な感じ。
「どうしたの?陽くん」
「あ、いや、なんでもねーよ。帰ろっか」
気のせいだと思い、再び止めていた足を動かし、歩き出す。
――――――
家の鍵を返してもらい、梨菜は一人、暗い道を駆けていた。
その表情は笑顔。今日1日のことを思いだし、自然に表情を綻ばせていた。
遊園地など、はっきりと記憶に残っていないほどに久しぶりに行った。
両親は共働きで、家にいる時間も少ない。だからこそ今日1日は、陽太たちと行った遊園地はとても楽しかった。
家に近付き、駆け足を緩めてゆっくり歩く。今日1日を思い出しながら。
後方から、2つの人影らしき物がゆっくりと、しかし確実に、歩み寄ってきていることになど気付くことなく―――
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