いつもと同じ朝

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――温かな春の陽差しに、薄紅色の花弁がひらひらと踊る。 背中に背負う真新しいランドセルと頭に被る黄色の学帽に、彼女の足取りはうきうきと軽い。 『……おじいちゃ~ん!こんにちはぁ~!』 『おぉ、福子。一人で来おったんか?ぴっかぴかのランドセル、よぉ似合っとるぞぉ。』 店先で待っていた祖父がまんまるな顔を笑顔でくしゃりと崩し、彼女を温かく迎えてくれる。 『うん!あのね、福子、おねえちゃんになったんだよ。いいでしょお!』 『ほぅか、ほぅか。福子ももう、小学一年生じゃもんなぁ…。』 目の前でくるりと回ってみせた孫に相好を崩したまま、祖父はそうかそうか、と頷きながら彼女の小さな頭を撫でてやる。 『福子、学校で何か嫌な事あったり虐められたりしたら、すぐ、じいちゃんに言うんじゃぞ?じいちゃんが必ず、助けてやるからの。――そうじゃ、また餅、食ってくか?』 『うん!食べる!』 温かな祖父とその手と、優しい春風に見守られ。 彼女は幸せに笑っていた―――。
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