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階下に下りれば彼女を待っていた母が台所からひょこり、と顔を覗かせる。
おたま片手に尋ねて来るのに、首を横に振りつつ娘が返せば。
彼女は見るからに渋い顔をした。
「……今日も?昨日の朝もそうだし、夜だって貴女、あんまり食べなかったじゃない。」
「あれ以上食べたら、また太っちゃうよ……。」
(…というか、もう既に太っちゃったかも……。)
「ふくちゃんは気にし過ぎなのよ。女の子はぽっちゃりしてる方が可愛いんだから。また無理なダイエットして、倒れちゃったりしたらどうするの?」
「大袈裟だよ。…私、そろそろ行くね?遅刻しちゃいそうだし。」
「あぁ~、待って待って!せめてこれだけでも食べていきなさい。学校で食べても良いから!」
玄関を出ようとする娘に可愛らしくラッピングされた物を半ば強引に持たせ。
彼女は玄関口に立ち、登校する娘の後ろ姿をしばし見送る。
「いってらっしゃぁ~い。それ、ちゃんと食べなさいよぉ~~?」
「はぁーい。いってきまーーす。」
ひらひら と。
さくら舞う季節。
その日も いつもと同じ朝 が。
そこにあった。
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