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ーー次の日の朝。
薄ピンクのコートの上に、昨日ハイスクールを休んで準備した、荷物を詰め込んだリュックを背負う。
そして、もうしばらくは帰れない自分の部屋に別れを告げ、ママの待つ玄関へと向かった。
「じゃ・・・行ってくるね!」
泣きそうな気持ちを抑え、明るく言ったつもりだったのだけれど、やっぱり少し声が上擦ってしまった。
ママは、そっと私を抱きしめると、
「行ってらっしゃい、気をつけて。ハイスクールには休学届を出しておくからね。心配しないで」
そんなママの手や肩も少し震えている。
私はママの手をそっと離すと、ドアを開けて歩き出した。
数歩踏み出した所で、私は振り返り、
「ねぇママ、パパはこうなる事を多分判っていたよね。何で戻って来た時に秘薬を持ってきてくれなかったのかな」
と、問い掛けた。
ママは小首を傾げ、クスッと笑うと、
「そうね、きっと・・・パパも成長したあなたに会いたかったからじゃないかしら?」
それを聞いた私はおもいっきり笑顔でママに手を振ると、また背を向けて歩き出した。
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