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【第三章】国境の街ダイゴンド
「はぁ・・・もうすぐ国境ね」
半日程歩いた私は一息つくと、立ち止まり辺りを見渡した。
一面の雪景色。
大量の雪は、雪国に住む者にとって決して良い事ばかりでは無かったけど、しばらく見なくなると思うとやっぱり寂しい。
その時!
不意に、バサバサと雪の落ちる音と共に、道の脇から人影が現れた!
「う゛わぁぁ!」
あまりにも突然の出来事に私は、とても女の子とは思えない叫び声を上げてしまった。
落ち着いて見ると、その人影の主は、かなりの美少年だった。
歳は、見た感じ私と同じか少し上くらい。背は頭一個分くらい大きい。
そして黒くて指通りのよさそうなツヤツヤサラサラの肩までの髪。少し茶色掛かった切れ長の瞳。
しかし次の瞬間、口をポカンと開けて見惚れている私に向かって彼が放った言葉は、とてもその口から出たとは思えない衝撃的な言語だった!
「助けてくだちゃい!悪い人(ちと)に追われているのでちゅ!」
私が今度は別の意味で口をポカンと開けていると、今美少年が出てきた場所から、数人の人達がバサバサと雪と木をかきわけて現れた。
「ひいぃ」
と、美少年が小さく悲鳴を上げる。
・・・ん?でも
『悪い人』
というか、どこからどうみても普通のおじちゃんおばちゃん達にしか見えないけど・・・?
すると、先頭のおじちゃんが息を切らせながら、
「お嬢ちゃん、その後ろに隠れている男の子をこちらに渡してくれるかい?」
え?・・・あ!
いつの間にか、美少年は私の背中にしがみつきながら、ブルブルと震えている。
・・・しょうがないな。
「あの、この人なにしたんですか?」
先頭のおじちゃんに聞いてみた。
おじちゃんは、まだ怒り冷めやらずといった様子で美少年を指差しながら、
「この子はね、勝手に人の家に上がり込んで、タンスを開けたり家宝のツボを割ったりしやがったんだ!」
すると、他の人達も口々に、
「俺ん所はツボの中の漬け物を食われちまった」
「私の所は酒樽を割られて、売り物の酒が全部流れちまったよ!」
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