【第三章】国境の街ダイゴンド

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ウキウキしながら料理が運ばれてくるのを待っていると、厨房から、 「あれ?おかしいなぁ~」 と、中年の男の人の大きな声が聞こえてきた。 「あんた、どうしたんだい?」 さっきの女の人が声を掛けた。 すると、頭にバンダナを巻いた大きな身体の、黒い髭を生やした男の人が、厨房の入口からひょいと顔を出し、 「鍋の中のバニラ鳥のシチューが、キレイになくなってるんだよ!」 女の人は驚いた様子で、 「ええ!?無くなるにはまだ早いんじゃないのかい?」 そう言って厨房の中へと入っていった。 しばらくして厨房から出てくると、まっすぐと私の方へと向かってくる。 まさか・・・ 私のテーブルの所に来た女の人は、 「お嬢ちゃんゴメンねぇ、シチュー終わっちゃったみたいなのよ~」 と、とてもすまなそうに言った。 そんなぁ・・・ 「ちょっと待っててね!何か他の料理を持ってきてあげるからさ」 女の人はそう言って厨房へ戻っていった。
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