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「今から20年前、あなたが産まれる少し前の事だったわ。買い物に行った帰り道、雪に埋もれてビービー泣いている一人の男の人を見つけたの。ママは面倒な事に巻き込まれるのが嫌だから放置しようと思ったんだけど」
いや、そこはすぐ助けようよ・・・
「よく見たらかなりの美青年だったから、助けてあげたのよ」
そこがポイントなの!?
「聞いたら記憶が無いって言うし、ママも一人暮らしだったから、ボディーガードとして家においてあげる事にしたのよ」
・・・どう考えてもボディーガード向きではなさそうだけど。
「それから月日が経って、パパとの間には恋が芽生えて、そしてあなたが産まれたの。その幸せはずっと続くものだと思っていたわ、でも」
でも!?
「ある日、突然パパは姿を消したの。ママは、まだ幼いあなたを連れて一生懸命捜したわ。でも見つからなかったの」
ここで一旦ママは、ミルクを一口飲んで喉を潤すと、また話を続けた。
「するとある日、捜し疲れたママが家に帰ると、家の前にパパがいたのよ。思わず駆け寄って二、三発ビンタ・・・いえ、頬を軽く叩くと」
・・・
「少し涙目で頬を押さえながらパパは言ったわ、全て思い出したって。自分はホワイトドラゴンの王子なんだって。記憶が戻って一度は谷に帰ったものの、ちゃんとお別れを言いに来たって・・・」
「何でお別れなの?一緒に行く事は出来なかったの?」
私が聞くと、ママは首を横に振り、
「ドラゴンの住む谷は聖なる地、人間が立ち入ってはいけない場所なの・・・そして、ママの目の前で大きなドラゴンの姿に戻ると、空へと羽ばたいていってしまったわ」
そこまで話すとママは、いつのまにか頬を伝って流れ落ちていた涙をハンカチで拭った。
・・・昔、まだ私が小さい頃、ママから、パパは死んだのよって聞かされていた。なのに、まさかこんな衝撃の展開が訪れるなんて!
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