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「楽しみねぇ、菊乃のウエディングドレス姿」
いつもは大口を開けて笑う母が、口元に手を添えて上品に笑う。
「…白無垢も、いいんじゃないか」
いつもはTシャツにハーフパンツ、と小汚い格好をしてお腹をボリボリ掻いている父が、それなりの身形をして背筋を伸ばし、照れ臭そうに咳ばらいしながら言う。
「せっかくですから、どちらも着ましょうね」
いつもはにこりともせず、無愛想な男が満面の笑みで私の顔を覗き込んで尋ねる。
私の答えを待つ皆の視線が集まると、体からさあっと血の気が引いていく音を聞いた気がした。
「い…いやあぁぁぁーーーっ!!!」
とうとうこの状況に耐え切れなくなった私は席を立ち、2階にある自分の部屋へと逃げ出した。
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