悪夢の始まり

18/35
53738人が本棚に入れています
本棚に追加
/798ページ
「おはようございます、菊乃さん」 不気味なくらい満面の笑みで立つ課長は、淡い期待だけでは飽き足らず、私の思考回路までも打ち砕いてしまったようだ。 あまりの衝撃に頭の中は真っ白で、ドアノブを握り締めたまま、玄関先で固まってしまった。 「ほら、さっさと行きますよ」 その声でやっと正気を取り戻すと、私は力一杯ドアノブを手前に引いた。 夢だった事にしよう。 ドアの向こうには誰も居なかった。 チャイムの音はきっと誰かのいたずらか幻聴だ。 そうだ、私、きっと疲れてるんだ。 そう自分に言い聞かせて、ドアを閉めようとするのに、ぴくりとも動かない。 「無駄な抵抗は止めなさい」 声色こそ穏やかだけれど、高圧的な声が届くと、ドアを引くのを怯んでしまった。 その隙に、課長の足がドアの隙間に滑り込み、閉じるのを阻む。 ぎょっとしていると、課長のほくそ笑む声が聞こえた。 「怪我したら慰謝料請求しますからね」  
/798ページ

最初のコメントを投稿しよう!