TAKE00

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 端的に言ってしまおう。  人生は思い切りと諦めが肝心だ。  そんなわけで俺は航空機(ふね)を購入した。  付け加えもしよう。  たいしたものは買えなかった、と。  まあそこまでは十分想定内─────というよりも当然の顛末と言える。  数ヵ月前に、とある委任請負型組織から脱退した俺に安定した収入があるはずも無く、又不確定な将来に備えて貯蓄するだけの甲斐性もあいにく持ち合わせていなかった。まあ何だ。その日一日を凌げればそれでいいと思っている、要するに俺は筋金入りの適当な人間なのだ。  組織を脱退した理由も特筆する程のことではない。理由を具体化しないと、今後の話の展開に支障が出るというわけでもあるまい。単に飽きたからということにしておくか。  当然ながら船種の選択範囲もがっつり搾り取られるというもんである。まず、最新機体や乗組人数優先の大型機体は問答無用で却下だったし、機能性から見ても、攻撃特化型マイクロ・プロセッサー(MPC)や三面相ストリーミング通信装置とか識閾化CAT可換性連弾銃(ミサイル)とか任意座標軸自動旋回プログラム搭載の、よくは分からねぇけど何やらきっと色々スゴイ代物なんだろうなめちゃくちゃかっこ良いなおい的な先端技術は望むべくも無かった。  結果、俺が選んだ一つの船体。  機体名は『銀律盤(イフリキュール)』というらしい。  第一印象は巨大な銀色の卵。  全長十メートル弱か。  船体としてはかなりの小柄な部類に入るが別段ダウンサイジングを意識したわけでは無く、単に定員を一人と想定してのことだろう。居住スペースを確保できただけでもましである。  実を言うならこの機体、売り物ではなかった。俺の財政事情と折り合いが付くような価格の航空機なんて無いにも等しかったのだ。もっと都心部にある大きな専門店に行けばもう少し選択の余地があったのだろうが、俺がいるこの街から都心部へ向かうとすればちょっとした距離である。そこまでの道程で路銀が尽きるのは目に見えている。  俺があまりにも難しい顔か、困惑しているかのように見えたのだろう。とはいえ、基本の表情が仏頂面なのでただ単にガン飛ばされてるみたいで恐かっただけかもしれないが─────店の主人が紹介してくれたのは郊外にある、とある廃品回収工場だった。
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