TAKE00

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 露骨に馬鹿にされているのかと思ったが、話を聞いてみると一口に廃品回収と言っても、少し手を加えれば正常に動作するものや一昔前のデザインで売れ残った機体等が、本格処分される前に格安で取引されることがあるらしい。とりあえず話だけでも聞いてみようと、教えられた場所へやってきた俺は工場の陰気臭い面構えした管理人に敷地内の倉庫へと通され、そこで──────それと出会ったのだ。  鈍く光る銀色の外装。  くすんではいるが、錆び付いてはいない。それは倉庫でずっと眠っていた割にはかえって不自然なくらいに綺麗な保存状態だったが、その俺の表情を読んだのだろう。かの中古以上廃棄未満を捨て値同然で引き渡してくれた管理人は説明した。なぜか、一段階声をひそめて。  数十年か、それ以上前か。この地で滑空機と推測される一つの卵型機体が地上に打ち捨てられているのが近くの住人によって発見された、らしい。  が、船籍は当時製造されていた大手メーカーのいずれにも当てはまらず、表面の機材は当時普及していた需要金属のいずれにも該当しない物質だった。いかなる製造過程で作られたのかも不明。いずれかの人物の手による自作だろうと杜撰な結論が出され、調査対象として各地の研究所を点々としたが、機体には何らかの自律的な遮蔽プログラムがかけられているようでそれは発見後一度も起動していないという。最終的には研究者達も匙を投げたと言うべきか、それは調査対象から外されて最終的に流れ着いたのがこの廃品回収工場だった───────らしい。  らしい、を連発しているのはこれがあくまで噂だかである。都市伝説みたいなものか。  要するに、だ。  船籍未定、機能不全、正体不明の『幽霊船』に俺はブチ当たったということだが、格安の物を探し求めていたら自然にこういう露骨に胡散臭い噂付きのイワクモノにブチ当たるというわけでそれはもはや偶然でも何でもなく必然的帰趨を迎えたとも言える。無論、噂をはなから信じているわけではない。つまりは、これも廃品同然の物を売り付ける為の宣伝とか戦略の一つなのだろう。よくある話である。
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