TAKE00

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 まあ、少し考えれば……本当にこの機体が前代未聞の未確認機体ならば、いくら遮蔽ロックがかかっているからといって研究所がそう簡単に手放すとは思えないしな。そういう機体が発見されたのが事実だったとしてもこれがその機体であるという証拠は何処にも無い。  素人意見とはいえ、表面のコーティングも何らおかしくない、普通の鉛にしか見えないし。  逆に言えば、遮蔽ロック云々が事実だとするなら、今後機体を乗り回そうとささやかな夢を目論んでいる俺にとっては笑えない冗談である。この機体が都市伝説なんかであってもらっては困るのだ。  幸いにもというべきか、以前の職業柄、俺はそこそこ顔が広い。プロ顔負け─────いや、もしかしたらそれ以上の修理テクを持つ技術屋に心当たりがあった。  遮蔽ロックだとか何だとかは信じちゃいないが、船が何らかの異常を来しているのは間違いないようだからな。  ぜひ引き取りたいとの俺の申し出を快諾した管理人は、喜びのあまりか、サービス精神旺盛なのか、他にもこの船にまつわる憶測や逸話を俺に向かってぼそぼそと語り続けたが、話が古代文明やら遺物やら神々の三大目論見やらに差し掛かったところで、俺はようやく彼の瞳に常人には測り知れない輝きを見い出し、逃げるように退散させてもらうことにした。  これ以上聞いていると明くる日から俺までオカルト知識を所構わず披露してしまいそうだった。  まあ……かくして。  俺は念願の航空機(ふね)を手に入れた。  航空免許は既に入手してある。  修理に関しては知り合いの技術屋に全面的に頼るしかない。おそらく素人目で点検しても芳しい成果は望めないだろうし────素人目で見てとれる異常ならば先に誰かが発見しているだろう─────こういう物は下手に触らずにすぐにでも技術屋に連絡を取るのがいいと、頭の中では分かっている。いる────のだが。 「銀律盤(イフリキュール)………ねぇ」  俺にも人並みくらいの好奇心はあるわけで。
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