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お花係
僕の住む近所にも同級生は何人かいたのだけれども殆どグループが違っていた。
外で野球やサッカーをする子、家の中でテレビゲームや漫画を読む子ばかりだった。
けれども一人だけ一緒にいて落ち着く女の子がいることに僕は気がついた。
『ねぇ、一緒に帰ってくれない?』
優子は震える声で僕に話しかけた。
季節は夏になっていた、先程まで空が明るかったのに急に辺りが薄暗くなり始めた。
『どうしたの?』
『なんだか急に暗くなってさ一人で帰るのが怖くなっちゃって…』
どうしてだろう…この時、今まで意識したことのなかった一人の女の子が急に僕の心の奥に住み着いたのは…
優子は小学校からの同級生だった。学校から家に帰る道が一緒だった。
でも一緒に帰ることなんてなかった。
僕はできれば一人でいることを好んだし、和馬は帰る方向が違ってたから。
僕は照れながら優子と歩き出した。
内心僕は安心した、こんな薄暗い日にあそこは一人では通りたくなかった。
そこは通学路の途中にある小さなトンネルだった。昼間でもその中は薄暗い。蛍光灯が一本だけあるが、今にも切れそうだ。
『ねぇ何だか不気味だよね。』
優子の声がトンネルの中で響く。
『なんでこんな場所を通らないといけないんだろうね。』
トンネルを出ようとした時、外の様子がおかしい事に気がついた。
『雨だ…』
土砂降りだ、二人とも傘を持っていなかった。
そして二人はその場に立ち尽くした。
まるで世界の秘密を見てしまったかのように
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