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太陽昇った明るい青い空。
見渡す限り美しい緑の森。
「…………」
その道の真ん中に、少女はぽつんと立っていた。
腰まである紅い長髪。黒と赤中心の服。例えるなら、真紅の炎のような少女だった。
「…………」
少女は何もせず、どこか虚ろな瞳で空を見ていた。
「……そこの娘」
その時だった。突然背後から男が現れた。
朱い髪に長いマフラー。闇に溶け込めそうなほどの黒い衣装。
「こんなところで何をしている」
「……何もしてない……」
少女は驚きもせず、男に答えた。だが少女は、未だ空を見たままだ。
「どこから来たんだ?」
「……わからない」
ここで少女は顔を俯いた。その顔に浮かぶのは、困惑、疑問……悲しみ。
「何もわからない……。どうしてここにいるのか、どこから来たのか……何がしたいのか……」
少女の返答に、男は目を少し細める。
「記憶喪失、か……」
「あたしは……」
少女は再び天を仰ぐ。
「――誰?」
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