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私は私のために、ミキと吉岡にくっついてほしかった。それでミキが幸せになって笑ってくれるならと、思った。それがミキにとって幸せならと、思い描いた。うれしかった。友達の幸せと自分の幸せが同調する感覚が――――錯覚が。 ミキは大切な友達。大切な人のために何かをしてあげたかった。褒められたいわけじゃない。自己満足でいい。陰で何か、手助けを。そう考えるとすぐに案は浮かんだ。『彼女』という『邪魔者』の存在を削除すればいい。ミキが言ってた。彼女がいるから、と。彼女がいなければ、いなくなればミキは幸せになれる。吉岡と両想いになれる。ミキは喜ぶ。 私は何もおかしいとは思わなかった。間違っていないと思った。ばれなければ問題無いと、リスクを全く計算しない内から行動を始めてしまっていた。途中で気付いた。ばれたらミキは私をどうおもうだろう。遅すぎた。ばれればおしまいだ。急に怖くなった。そのときにはもう吉岡と身体の関係を持ってしまっていた。私はもう既にリスクを背負っていることに気付いた。私の身体自身だ。好きでもない相手に身体を委ねた。それがリスクだということに、後で気付いた。ミキが幸せになるというリターンに気持ちを奪われ過ぎて、自分の身体のリスクを考えていなかった。結果しか見えていなかった。ミキのためなら構わないと思っていた。それが異常なことだと、気付くのが遅すぎた。 私は、ハジメの言うとおり、狂っている。
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