革命宣言

4/9
前へ
/324ページ
次へ
会社が終わる頃には、今朝の撫子の事も忘れていた。 部下にスロットで勝った話をして、それがなぜか白熱した。 俺はいついつ、これだけ勝った。俺は最高これだけ勝った。 勝った話しかしないのは、ギャンブラーの悲しい性だ。 ホームに向かい、電車を待つ。 朝のせわしなさと違い、ゆっくりとした時間が流れている。 電車に揺られながら、家に帰るのがダルいなどと考えた。 会社が許してくれるなら、あそこに寝泊まりしていた方が、よっぽど心休まるのだから。 目的の駅に降り立つ。 深く溜め息をつく。 気合いを入れなおし、歩き出す。気合いを入れなければ、家に帰れないのか。俺は。 「あの……」 まったく女ってヤツは、結婚してしまうと、なんであんなに魅力がなくなるのか。 「すいません……」 家に帰りたくなるような家を作る。それが主婦じゃないのか? 「あの!」 いきなり腕を掴まれ、我に返る。 「君は……」 撫子じゃないか。 「ちょうど見掛けたから、後つけちゃいました。ちゃんとお礼も言いたかったし」 偶然の再会らしい。 ベタな展開だ。 そう思う自分と、懐かしい気持ちの自分。ベタでも、自分の身に起こると、運命に感じるんだな。
/324ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2017人が本棚に入れています
本棚に追加