迷路の中へ

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「!!」 腕を捕まれ、ビルの間に連れ込まれる。 不意打ちに、戸惑う間もなかった。 目の前には、背伸びをして俺にキスをする佐藤のアップ。 どうしてこうなんだよ。 こいつといると、男女の立場があやふやになってしまう。 「や……めないか!」 俺は佐藤を突き放し、ギッと睨みつけた。 「こんなトコじゃ……バレちゃうからぁ?」 唇に人指し指をあてる仕草に、俺の中の何かが弾けた。 「俺はあの夜の事は、一切覚えてない!」 キョトンとする佐藤に、益々苛立った。 「仕事以外で、俺に話し掛けるな!」 ここで1つ。 俺は温厚な方だと思う。特に女性には、こんな風に怒ることはまず無い。 「ひ…どぉいぃ……」 涙を浮かべる佐藤に、嫌悪しか感じなかった。 洋子ちゃんの涙を見れば、この涙が偽物なのぐらいわかる。 こんな女に、俺は……! ついでに八嶋!アイツは……! 俺は通りに出ようと、方向を変えた。 「……………」 「さ……くら?」 いつからそこにいたのか。 桜の目に、涙が溢れている。 桜はフイと方向を変え、走って行ってしまった。 「桜!」 桜を追おうとする俺に、佐藤がしがみついていた。 「桜!!」
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