迷路の中へ

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「誰?あの人ぉ……」 佐藤の力は意外と強く、俺の歩みを止めた。 「関係ない!」 強く言い放ち、自分の腕を佐藤から取り返した。 背中に佐藤の声を聞きながら、通りに出て右を見渡した。桜の姿は無い。 ちくしょう! とりあえず、右に行ったのは間違いないから……。 右に歩き出した俺に、佐藤が『待って』と言ったような気がした。 すまないな。 後できっちり話はしてやるから。今は、そんな事よりも…… 「桜……」 小走りで、あちこち見回しながら。そんなもんだから、たまに人とぶつかったりもした。 だけど、そんな事は気にしてはいられないのだ。 あの涙が、俺を動かす。 「ダメだ……」 桜は、駅とは逆に歩いて行った。故に、どこに行ったのか……見当もつかない。 ? そうか! こんな時の携帯電話! 出るかどうか。そんなの気にしていられない。 桜の番号。願いを込めて発信する。 2コール鳴る。 『……電波の届かないところに……』 虚しく響くは、機械的に喋る女性の……? 「桜……?」 いつもは鈍い俺の頭が、今はなんだか冴えてる。 本当に圏外か充電切れなら、コールしないだろ。それに、桜の声は間違えないぞ。
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