2018人が本棚に入れています
本棚に追加
こんな時に、ちょっとおかしなネタを使われると……どう対処していいかわからない。
『いやぁ。騙されるところだったよ。HAHAHA』
なんて笑えないだろ。
「どこにいるんだ?」
残念だが、圏外アナウンスの採点は……次回に持ち越そう。
「……どうして……」
本気のトーンになった桜の声は、低く震えていた。
言葉を探しているだろう、この間。その沈黙がもったいなくて。
「駅に来い」
あぁ。俺ってば。
すごく偉そうに言ってしまった。
「今……タクシーで家に向かってるんで」
タクシーの中で、圏外アナウンスの真似をした桜に、若干驚きつつ。
「今から家に行く」
そう告げた。
桜が返事をする前に電話を切り、ちょうど通りかかったタクシーに右手を挙げる。
……………。
素通りか!
こんな時に!
見回すと、少し先に今客を降ろしたばかりのタクシーが見えた。
そこにダッシュで向かう。
うん。ジムでのトレーニングが、こんな所で役に立つと思わなかった。
客が降りると同時に、タクシーの助手席の窓を叩くのに成功した。
それに乗り込み、行き先を告げる。
「急いでくれ」
最初のコメントを投稿しよう!