迷路の中へ

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こんな時に、ちょっとおかしなネタを使われると……どう対処していいかわからない。 『いやぁ。騙されるところだったよ。HAHAHA』 なんて笑えないだろ。 「どこにいるんだ?」 残念だが、圏外アナウンスの採点は……次回に持ち越そう。 「……どうして……」 本気のトーンになった桜の声は、低く震えていた。 言葉を探しているだろう、この間。その沈黙がもったいなくて。 「駅に来い」 あぁ。俺ってば。 すごく偉そうに言ってしまった。 「今……タクシーで家に向かってるんで」 タクシーの中で、圏外アナウンスの真似をした桜に、若干驚きつつ。 「今から家に行く」 そう告げた。 桜が返事をする前に電話を切り、ちょうど通りかかったタクシーに右手を挙げる。 ……………。 素通りか! こんな時に! 見回すと、少し先に今客を降ろしたばかりのタクシーが見えた。 そこにダッシュで向かう。 うん。ジムでのトレーニングが、こんな所で役に立つと思わなかった。 客が降りると同時に、タクシーの助手席の窓を叩くのに成功した。 それに乗り込み、行き先を告げる。 「急いでくれ」
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