迷路の中へ

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おかしいな。 間違えてるのかな。 チャイムは確実に鳴った。しかし、出てくる気配がない。 このまま帰ってしまおうかとも思うが、ここに来ると言ってしまったし。 あー………。 どうしよう。 電話するか? 携帯を取ろうと、胸ポケットに手を伸ばした瞬間。俺の携帯がブルブルと着信を知らせた。 タイミングのよさに、思いっきり『ビクッ!』となった。 思わず周りを見渡すが、静かな通路があるだけだった。 よし。誰にも見られなかった。 意を決して、携帯を開く。 「もしもし?どうした?春菜」 タイミングからして、桜かなと思ったら。どういうわけか、娘から。 「お父さん?今日、友達のとこ泊まるから。あとさ、部屋も決めたから。明日会社抜けてよ!」 マシンガンのように一方的に話し、返事をしてる最中に切られた。 春菜……。きっと、あのエセ爽やかスーツメンとデートなんだろう。 親子で異性に振り回されて。似て欲しくないとこが、そっくりなんだよ。 さぁ。気を取り直して、桜に電話でもするか。 「早かったですね」 後ろから聞こえた、桜の落ち着いた声。 その手には、コンビニの袋いっぱいの……各種あります!と言わんばかりの酒。
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