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微妙な沈黙に、テレビの音がやけにうるさく感じた。
ソファには俺。向かいの座椅子に桜が座っていて。
身を乗り出し、桜を阻止した俺。
俺は手を握ったまま、ソファから降りた。そして床に座り同じ高さの、本当の向かい合わせになった。
桜の顔が、さっきよりよく見える。
「ダメですよ」
俺の手を見つめて。
その目から、涙が溢れた。
思わず。桜の手を放しそうになる。
しかし、俺の手は……今度は桜に捕まえられていた。
拒絶の言葉とは裏腹に。
「ど、どうして、あんな所にいたんだ?」
沈黙が怖くなって、そんな事を聞いた。
「……驚かせようと思って。一緒に……駅まで歩いてみたかったし…」
俺の指に、桜が指を絡ませる。
「そしたら……。あんな綺麗な人に……」
桜の指が、俺の手を離しそうで離さない。
「好き」
少しの沈黙の後、俺を真っ直ぐ見据えた桜が言った。
「……ずっと。ずっと。たぶん……出会った時から、桜井さんを…好きです……」
正直、たまげた。
出会った時からだぞ?
「俺もだよ」
自然と出てしまった。
桜はキョトンと、俺を見つめている。その目にまだ、涙を溜めたまま。
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