迷路の中へ

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今更。 その言葉が頭を巡る。 繋いだ手。初めて触れた桜。 触れないことで、お互いに距離を保っていた。 それが破られたら、もう……言うべき事は互いに1つ。 「だって……桜井さん…」 佐藤を気にしているんだろうな。 俺は静かに、佐藤との経緯を話した。ホテル事件も含め、ちゃんと。 それが誠意で。それを聞いて、桜が離れて行くなら仕方ないと思った。 情けないオヤジの、情けない言い訳と取るだろうか。 いや。取るだろうな。 自分でそう思うし。 だけど、大事のは桜だって言うのは、きっちりわかって欲しくて。話に織り混ぜた桜への想い。 「……信じます」 話終わった後に、桜は静かにそう言った。 「……そばにいていいですか?桜井さんの家庭、壊そうなんてしないから……」 あ。そうか。 桜には、離婚したの言ってないんだよな。 「もう……。家庭はないから」 俺が笑うと、桜は苦しそうな顔をした。 「私が……いたからですか?」 いやいやいや。 「違うよ。あいつにも……想いを寄せる人がいて。親の…最低限の勤めが終わったから、自由になりたかったらしい」 桜のせいではない。 俺のせい。
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