迷路の中へ

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桜はゆっくりと、こちらに向かって歩いてきた。 いやー!どうする、俺!! 乙女に恥をかかせるのか? たしかに、やれるものなら……やってしまいたいのが、悲しい男の性である。 だけど、桜を汚したくない。 でも……。 桜は俺を素通りし、元いた位置にチョコンと座る。 あれ? 俺の予想では、『抱いて!』って言いながら、俺に抱きついてくる予定だったのに。 んでもって、こう……あれで……こうして……ああなる予定で……。 「こんな話、はじめてなんで……。はっきり顔見えたら、話せなくなっちゃう」 コンタクトまで外しながら、恥ずかしそうに笑う桜。 俺の、暴走妄想の方が恥ずかしいから。 「そ、そうか」 ほら。またどもったよ。 「桜井さんの事、もっと知りたいです」 そんな桜に、どうでもいい話ばかりした。 恥ずかしくてよ。 初恋みたいな感情だと、好きな女に手を出すことも出来ない。 抱き寄せるにも、テーブルが邪魔だし。なんて考えながら。 「桜井さん」 話が一段落した瞬間、桜が俺を呼んだ。 「キスしていいですか?」
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