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前章。
何が『迷路』かわからなかった読者。
俺もわからなかったから、安心しろ。
しかし……だ。
今ならわかる、迷路の意味が。
佐藤が暴走し始めている……ような気がする。
社内で、俺が離婚したのは大部分が知る事になっちまったからな。
何で広まったんだ?
はっきりはわからないけど、何となくはわかる……かな。
……と思う俺の目の前に、佐藤がにこやかに座っている。
俺の目の前には、佐藤お手製の弁当があるんだよな……。
10日ほど前、佐藤を振り切って、桜の元へ走ったんだ。
いやぁ……。
青春だよな。青い春と書くだけあるよ。
この歳になって、あんなに必死になれるなんて。
「どぉしたんですかぁ?」
手をつけない俺に、佐藤が疑問を投げ掛ける。
俺……。佐藤の目の前で、桜の名前を呼び、桜を追ったよな?
何で佐藤は、俺の前で笑って……弁当を食えなんて言えるのだろうか。
「前も言ったけど、こういうのは困る。第一、もう昼は食べたんだよ」
俺の傍らに、からっぽの丼があるんだ。さっき食べた、かけそばの丼が。
「足りないでしょ?遠慮しないでくださいよぉ」
お前が遠慮してくれよ。
そう思いながら、溜め息混じりに弁当の蓋を開けた。
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