2018人が本棚に入れています
本棚に追加
直帰の連絡を入れ、桜の家に向かう。
最近まで、まだマンスリーにいるんだな……なんて思っていたら、いつの間にかちゃんと引っ越していたんだよ。
凄い前に。
どうして、会社の近くに借りなかったか聞いた。
『朝に会えなくなるから』と、恥ずかしそうに笑う桜。
それを思い出しながら、玄関の前に立つ俺の手には、『合鍵』が握られている。
本当に、若い頃に戻った気がする。
ここで2時間ばかり過ごし、家に帰る生活。
言っておくが、まだ……その……アレ。か、体の関係は無いぞ!
何だ、俺。
思考の状態でどもるとは。
こんなんでよく、商談に行けてるよな。
「お疲れ様」
ニコニコと出迎えてくれる、我が愛しの……なんたらだ。
「次の休み、娘の引っ越しがあるから。来れないかもしれない」
桜の頭をポンポンと撫でる……と言うか、あやすように触れる。
こんな時の桜の目。
不思議な気分になるんだ。
落ち着いた感じが、いつもの桜。歳より、ずっと落ち着いて感じる。
だけど、こんな時。
子供のような目をする。そのくせ、瞳の奥は……不思議と大人を残している。
たまらなく愛しくなり、そのまま抱き締めたい衝動にかられる。
最初のコメントを投稿しよう!