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驚く俺に、戸惑う桜さん。
「いやっ……あの……。言い方変でしたか?」
今日、お洒落な店を見つけたらしい。しかし、一人では行きづらい。
だから、付き合って欲しいと。
「今日のお礼も兼ねて……じゃ、ダメですかね?」
そうか。
ちょっとびっくりしたぞ。
「あぁ。時間が合った時に行こうか。俺は、桜さんの一番最初の友達だしな」
そう。俺は友達になるんだ。こんな親子みたいな男女だからこそなれる、安全な友達だ。
「そうですね。友達だ」
はにかむ桜さんは、嬉しそうに見えた。だから俺も嬉しくなった。
「じゃあ、私の事『さん』付けやめて下さいね」
「それは、追い追いだ」
じゃあ、また。そう言って別れた。夜道だから、送った方が良かったか?
そう考えるうちに、桜さんの姿は、曲がり角で見えなくなっていた。
くすぐったいような、変な満足感があった。
明日も同じ時間、同じ電車だ。
明後日も、その次も、ずっと同じだ。
「ただいま」
返事がない家に入ると、ドッと疲れがのしかかる。
スーツを脱ぎ、椅子の背もたれにかけた。
それにしても、居間にも誰もいないし、人がいる気配もしない。
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