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閉店間際のスーパーに駆け込み、キャベツを2玉買う。
さぁ。これで俺も、スリムボディに変身だ。
「桜井さん!」
突如、声をかけられる。
ビックリして、キャベツを落としそうになる。
「桜……さん」
本人目の前にして、呼び捨てなどする勇気はない。
「奇遇ですね!買い物……?」
俺の手にある、スーパーの袋。キャベツが仲良く寄り添っている。
「あ、あぁ。ちょっとね」
思わぬ所で、会いたい人に会う。それは偶然を『運命』に変える状況。
いや。
家が近所なのだから、会う確率は高いのだが。
「今日は帰り、一緒じゃなかったですね」
そう笑う桜に、ときめく俺。
おい、俺。変な期待をするんじゃない。親子ほど、歳が離れているんだぞ?
同じ方向に、肩を並べて歩く。
その距離は離れていて、とても遠く感じる。
だけど、仕方がないのだ。
俺はしがない『オヤジ』だから。
桜は、可憐な女性で。
離れて歩きたくもなるだろ?
20年前なら、こんな可愛い人にでも、平気で声をかけたし。
男は女に『女を捨てるな』と言う。
女は男に『男を捨てるな』と言わないよな。
俺は、『男』を取り戻す。
桜の横顔に、密かな決意を固める。
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